火を絶やさない様に
「寝ずの番」という言葉があります。
亡くなった方のそばで「お線香や蝋燭を絶やさないようにする」と耳にしたことがあるのではないでしょうか。
地域や宗派によって考え方が異なる場合もありますが、今回は「寝ずの番」についてお話しをします。
◆線香とその歴史
お香には、棒状で火をつけるだけで使う事ができる「お線香」と、あらかじめ「香炭」と呼ばれる炭に火をつけて「抹香」と呼ばれる粉末状のお香を焼香炭にくべるタイプがあります。
一般的に自宅での使用が簡単なお線香を使用される方が多いです。
線香の歴史はとても古く古代インド時代に生まれたとされています。当時は香りを楽しむ目的のものと医療目的に使われていたとされています。また、気温の高いインドでは遺体の腐敗臭をやわらげるために使用されていたそうです。
◆お線香をあげる理由
仏教式のお葬式ではお線香を使用しますが、そもそもなぜお線香をあげるのでしょうか?地域や宗派によって考え方が異なる場合がありますが、いくつかご紹介します。
①線香の香りは亡くなった方へのごはん
「死後の人間が食べるのは匂いだけで、善行を積み重ねた死者はいい香りを食べる」という言葉があります。つまり亡くなった方の「ごはん」ということですね。
また、そのお香の香りで故人が迷わないようにするという意味もあるようです。
②自分を清める
お線香の意味合いは各宗派によって異なりますが、お香の煙で自分自身を清めるという意味もあります。
私たちは常に煩悩を持ち続けています。お線香をあげることでご自身の身体や心を清めて仏様向き合うという事でしょうね。
③亡くなった方へのご供養
お線香の煙によって故人との対話の道が開かれるといわれています。
静かな心でお線香に火をつけて、亡くなった方への感謝の気持ちや想いなどを心の中でしっかりと伝えましょう。きっと耳を傾けてくれるはずです。
◆寝ずの番をする場合とは
①通夜前のご安置
お亡くなりになって、お通夜の日まで自宅または葬儀式場にご安置をすることになります。ご安置場所には「枕飾り」にお線香などが用意されてお参りができるようになります。
②通夜当日の夜
通夜式を終えて会食などが始まる場合、この間は特にお線香が途切れないように注意します。会食も終わり翌日の葬儀の式が始まるまでお線香が途切れないように注意します。
・寝ずの番は誰の役割か?
寝ずの番は誰の役目でしょうか?
「通夜前のご安置」に関しては必然的に同居の家族になってしまいますが、通夜後の寝ずの番は、家族を中心に近親の親族が行うとよろしいかと思います。
・寝ずの番は必ずしなければならないの?
お亡くなりになって、出棺まではろうそくとお線香は絶やさないようにすべきではありますが過去と現代では状況が変わってきています。
・遺族は、無理をしたために体調を崩して葬儀に参加できないという訳にはいきませんので決して無理をする必要はありません。
※渦巻き線香
近年では長時間燃え続けるろうそくや10時間以上持つ渦巻き型の線香を用意している葬儀社も多くあり、遺族の負担が最小限で済むような工夫がされています。
睡眠などで長時間目を離さないといけない場合は、火災の危険性があるため【必ずろうそくを消す】、【受け皿の上に渦巻き線香があるか】この二点を必ず確認してから休むようにしましょう。
◆線香のあげ方
寝ずの番をしている方のお線香のあげ方は、宗派によって異なっており、本数が決められている場合もあります。
複数の煙があると故人が迷ってしまうという言い伝えもあるので、お線香をあげる際は一本が良いとされています。
また、お線香の置き方は大別すると浄土真宗、学会は横に寝かせ、それ以外の宗派はお線香を立てます。